(2001年6月14日更新)

Emi Clockができるまでのドキュメンタリーです。読んで飽きないようにどこぞで耳にしたことのあるコピーをモチーフに展開してみました。

目次

このままではアカンなあ
これや!
かんたんじゃねーか
ぬいでもスゴイんです
あたまきた!太ってやる~
笑ってお仕事
こんどのEmi ClockはInternetだ
お・ま・た~
俺の歌をきけ~!

1.このままではアカンなあ

1993年2月末、サンフランシスコの馬鹿でかいコンピュータ・ショップをぶらついていた。トイザラスのコンピュータ・ショップ版と想像してもらえれば近い。ソフトだのハードだのを無造作にショッピング・カートへ放り込む図式だ。
米国内の数社のソフトウェア開発現場を見た。そして、日本の現状と比較して思った。
このままではアカンなあ
オリジナリティーあふれる優れたソフトは海の向こうで生まれる。日本のソフト技術者はローカライズ屋と化してしまっているからだ。自分でオリジナル・ソフトを開発して海外へ向けて発信しようと一念発起し、購入したばかりのMacintosh Quadra 700にThink CコンパイラをインストールしてMacintoshのプログラミングを始めた。
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2.これや!

想像以上にMacintoshのプログラミングは難解だった。途中で挫折し、その年の夏には76鍵MIDIキーボード、Roland&KORGのMIDI音源を接続して、シーケンサと化していた。単なる楽器だ。そして、またたく間に1年近くが過ぎた。
1994年1月末のある寒い朝、まどろみの中で不思議な夢を見た。
Macintoshのデスクトップの右上に、丸いシェイプの時計が浮かんでいた。その時計の中心部には、なんと美少女キャラが配されているではないか。
これや!
いうのは、ひとつしかないと思った。この夢のお告げの時計を作ろうと 思いたった。
前日の深夜、スーパーリアル麻雀で遊んだ ことが勝因かもしんまい。
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3.かんたんじゃねーか

作るものは決まったが、一度挫折したMacintoshでのプログラミングを再開することは容易ではなかった。幸いにも社内には「Mac教教祖様」を中心とするMacintosh通が多かったので、彼らに「Inside Macintosh」という英語の本を紹介してもらい、大金をはたいて購入した。投資金額が並ではなかったので「マジ」で勉強した結果、1週間で夢で見たのと違わぬプロトができた。
(「やればできるじゃない。」by 恵美)
かんたんじゃねーか
グラフィック(ドット絵)をマウスで描く作業は結構大変だったので、A4サイズの筆圧感知タブレットを購入して作業効率アップを図った。
お絵かきツールは、SuperPaint 3.0Jを中心に他のツールも必要に応じて使用した。当時Macintoshがなかったら、このEmi Clockは生まれなかっただろう。
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4.ぬいでもスゴイんです

プロトができたところでβテストという段取りになるが、このテのソフトは若いねいちゃんに評価してもらうのが一番と判断した。そこで「ぬいちゃん(写真)」なる謎の女性の机上のMacintosh LC475に、こっそりプロトを仕込んでおき、密かに反応を見る方法を実践した。(それにしても女性がらみの逸話が多い)
「か~わい~!」と歓喜すればデザインは合格、「なにこれ!」と憤慨すれば不合格というわけだ。簡単至極このうえない。
この方法によりグラフィックをブラッシュアップしていたある日、某えっちアニメゲーム通が「これ、ぬがないの?」との鋭い指摘をした。この展開はある程度予想はしていたが、自分からは率先できずにいた。これで「ユーザ要求でサポート」という大義名分ができたわけだ。ほほほ。
ヤッタネ!
ぬいでもスゴイんです
という、究極のワザを身につけた恵美ちゃんであった。
ぬいちゃんは、いまでは人妻だ。
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5.あたまきた!太ってやる~

あくまでグラフィックはオリジナルで描かないと著作権がらみで痛い目にあう。(以前、でんこちゃんスクリーンセーバーというWindowsのスクリーンセーバーを作って、東京電力さんに「だめ」と言われた経験に基づく)そこで、オリジナルのキャラを作りあげた。
次は衣装のデザインだが、これが意外に面倒な仕事になった。オリジナリティーを重視するポリシーを貫くため、自分の目でみた衣装を参考に、あくまで自分流にアレンジすることにこだわったからだ。そこで、実物衣装の取材の敢行という呆れた所行に及ぶはめになった。
某月某日、ウェイトレスの制服の取材ということで、横浜ランドマークタワーのアンナミラーズへ行った。店内の雰囲気からして入りづらいものがあったので、これまた謎の女性「みーちゃん」と「にゃん」、それにかの有名な古場ちゃんの4人であま~いパイを食べながらの取材とあいなった。しかし、帰宅してグラフィックを描こうとして、はたと困った。思い出せない。ねいちゃんに見とれていて、あたまの中が真っ白だったのだ。仕方なく、アンナミラーズを再び訪れる羽目になったのだった。 あったまきた!
あたまきた!太ってやる~
と、パイにパクつく妙な野郎になっていた。
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6.笑ってお仕事

Macintosh版をNIFTY-Serve(FMACPRO)へアップしたところ爆発的な人気となり、その後雑誌やムックでも取り上げられて人気ソフトの仲間入りをした。しかし、Macintoshの大幅値下げが断行され、世はDOS/Vブームに向かっていた。日本にもWindowsの波が押し寄せてきたわけだ。こうなると、Windows 3.1版を作らねばなるまい。
が、しかしこれは或るひとつの問題(丸いウィンドウの実現方法)を除いては造作もないことだった。なぜならば、本業がWindowsアプリの製品ソフト開発だからである。Windows版は1週間ほどでβテストへこぎつけ、Macintosh版から僅か2週間遅れで NIFTY-Serve(FWINF)へアップした。こちらも、爆発的な人気だった。
お陰様で、Emi Clockの開発記事をソフトバンクさんの「Cマガジン(94年8月号)」に書かせていただき、ちょっとばかり懐が潤ったりした。
笑ってお仕事
と、マイクロソフトに感謝すべき境遇だったが、裏切ってMacintosh Duo 280cを原稿料で買ってしまったという、バチかぶり者である。
ちなみにEmi Clockが紹介された雑誌やムックは、計200誌を超える。
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7.こんどのEmi ClockはInternetだ

NIFTY-Serveで評判になった後、社内のircでの会話から古場ちゃんが「fjに流そう」と提案、「いよいよ世界へ向けて情報発信だ!」ということになった。そしてめでたく fj.binariesに流れ、おおかたの予想通り、海外でもかなりの人気となった。当初の計画通り、世界に蔓延するEmi Clockとなった。
Macintosh版、Windows版ときて、「X11版がないのは、寂しいね。」と古場ちゃんが言いだした。しかし、実は会社でNEWSを使っていながら、一度もX11のアプリを組んだことなどなかったのだ。これではMacintosh同様、勉強しながらの開発となり時間がかかってしまう。そんな折り、親切な古場ちゃん(実は彼は、X11版xnekoの作者だったのだ!)が X11版の開発を引き受けてくれることになった。
さすがに古場ちゃんである。彼は、恵美ちゃんのグラフィックを受け取ってわずか1日でプロトを作ってしまった。(おそるべし)これで、3大プラットホームの制覇を達成し、Internetを通じて世界中に流布されるに至った。
こんどのEmi ClockはInternetだ
古場氏はX11版の開発秘話を、アスキーさんの「BSDを256倍楽しむ本」に書いている。
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8.お・ま・た~

94年6月にWin版2.0.0、Mac版J-3.0.2、X11版1.0.2をリリースしたまま、Emi Clockのバージョンアップは停止してしまった。この理由は、各プラットホームで仕様を統一しようとしたためである。このため、異なるプラットホームへの移植が困難な機能追加を排除することとなった。実際、周囲には「これ以上の機能追加は不要」との意見が多かった。
ところが世の中は空前のネットワークブームとCD-ROM付雑誌・ムックブームになっていた。飽和するはずのEmi Clockユーザは予想外の膨張を遂げていた。そのような情勢の中、ついに恐れていたバージョンアップ要求の声が日増しに大きくなってきたのだ。こうなれば、もはやバージョンアップ版を出さざるをえまい、ということになった。そして、ついに1年の沈黙を破って、Win版3.2.1、Mac版J-3.1.5をリリースした。
お・ま・た~
特にWin版3.2.1は「ねいちゃんブラウザ」なるビジュアルな衣装ブラウザ付きとなっていて、親しみやすい。これは現在開発中のWin 95版をにらんでのGUIの変更である。さらに 「オプション衣装」なるアドオン衣装データのプラグイン・インターフェースを内蔵する等、末永くお使いいただける工夫を凝らしている。
最新版ダウンロードサービスは、のホームで無償公開中。
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9.俺の歌をきけ~!

これからEmi Clockはどうなっていくのか?
少なくとも、この先6カ月先には消滅していないことは確かそうである。 それは来るべき Windows 95時代が Emi Clockを呼んでいるからだ。 Win 95版では、Win版3.2.1のGUIをさらに強力にパワーアップし、よりユーザのニーズに沿った形での環境設定が可能となっている。また、Win NTで使用したときにみられるCPUリソースの浪費も低く押さえられ、Win 95のプリエンプティブなマルチタスク環境を生かしたものになっている。これがリリースされるのは国内でWin 95Jが販売された後になるが、いまから楽しみである。もちろん 32ビット・ネイティブなアプリと して登場する。
一方 Mac版のほうは、PPCネイティブ(またはFATバイナリ)版を出す予定である。しかし、これは直接には目に見える効果が薄いため、これだけではバージョンアップ版が登場することはないだろう。
Emi Clockは世界に向けてメッセージを発信し続けている。
俺の歌をきけ~!
そう。Emi Clockは、俺の歌だ。(まー、かっこいい)
。。。と書いたが、すでにWin 95版が ホームページで公開されている。
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